認知症は薬で治る?——その前に考えたい「認知症とは何か」
- 賢一 内田
- 4月9日
- 読了時間: 3分

よく患者さんから「認知症って薬で治るんですか?」と聞かれます。私はそんな時、決まってこうお答えしています。
「そんな良い薬があるなら、まず自分が飲んでますよ!」
でも、そもそも“認知症とは病気なのか”という根本的な問いから考えてみたいと思います。
神経細胞は再生しない、それには意味がある
人の神経細胞は基本的に再生しません。例外もありますが、これは人間の「個性」や「人格の一貫性」を保つためには理にかなっているのではないでしょうか。
もし、壊れた神経細胞が部品のように取り替えられるような存在だったとしたら、人の記憶や性格まで変わってしまうかもしれません。神経細胞が一度失われたら元には戻らない。だからこそ、滅びゆくことさえも「その人らしさ」なのだと私は思っています。
認知症の時代に必要なのは“理解”
厚生労働省の推計によれば、2025年には認知症の人は700万人に達すると言われています。これは高齢者の5人に1人の割合です。今や「認知症と共に生きる時代」に入っているのです。
認知症と聞いて、まず思い浮かぶのはアルツハイマー型認知症かもしれません。でも、実は認知症にもいろいろな種類があります。今回はその中でも、日本で2番目に多い レビー小体型認知症(DLB) について、少し掘り下げてみます。
レビー小体型認知症(DLB)とは?
DLBは「意識の変動」が大きな特徴です。記憶障害よりも、幻視や妄想、せん妄などが目立ち、転倒や誤嚥(ごえん)といった身体的な問題も介護を難しくします。
こんな症状、ありませんか?
生々しい幻視(特に人・子ども・動物)
薬が効きすぎてしまう(風邪薬や睡眠薬で異常に眠くなる)
夜間の寝言や、昼間の強い眠気
意識を失ったが検査では異常なしと言われた
食事中によくムセる
認知機能に日ごとのムラがある
身体的な特徴
ゆっくり、腕を振らずに歩く(パーキンソン病と似て非なる動き)
顔が暗く硬い、声が小さい
肘関節に“歯車様”の筋固縮(ドパミン不足のサイン)
真面目で誠実な性格
DLBの治療薬と注意点
DLB治療の“三種の神器”はこちらです:
リバスタッチパッチ(アセチルコリン補充)
ドパコール(ドパミン補充)
抑肝散(漢方:幻視などへの効果)
処方例:
リバスタッチパッチ 4.5mg/日1枚
ドパコール 50mg/朝夕食後に各1錠
抑肝散 5g/朝夕食前に分2(+余裕があればフェルガード100Mを追加)
注意:アリセプトは慎重に!
DLBでは薬剤への過敏性が非常に高いため、アリセプトなどの認知症治療薬はごく少量で慎重に使用します。通常量を処方してしまうと、歩けなくなったり、食事ができなくなったり、ひどい場合は誤嚥性肺炎で命に関わることもあります。
他院でアリセプトが出されていたら、まずは中止からスタートすべきです。抗精神病薬も同様に、慎重な投与が求められます。
まとめ:認知症を“治す”ではなく、“理解する”
認知症は「治す」というより「理解し、付き合っていく」ものです。特にDLBは、特有の症状と対応のポイントを知ることで、介護もずいぶんと楽になります。
もっと詳しく学んでみたい方は、YouTubeでも情報を発信しています。よろしければご覧ください!
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