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がん性皮膚潰瘍とは? ~見えないつらさに寄り添うケアを~

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 3月24日
  • 読了時間: 3分

がんが皮膚に広がったり、再発や転移によって体表面に現れると、皮膚が潰瘍化してしまうことがあります。これを「がん性皮膚潰瘍」と呼びます。

がん性皮膚潰瘍は、転移性がん全体の約5〜10%に見られ、特に乳がんや頭頚部がんでの発生率が高いといわれています(※1)。

がん性皮膚潰瘍の“におい”の原因とは?

潰瘍部分に感染が起こると、独特の不快な臭い(がん性皮膚潰瘍臭)が発生します。この臭いの主な原因は以下のとおりです:

  • 嫌気性菌(空気を嫌う菌)の感染 例)Bacteroides属、Clostridium属 など

  • 菌が産生する揮発性脂肪酸(酪酸、吉草酸、ヘキサン酸など)

  • 壊死した腫瘍組織から生成されるポリアミン類(プトレシン、カダベリン)

こうした物質が混ざり合うことで、強い臭気が発生します(※2)。

臭いが及ぼす影響は見た目以上に深刻です

  1. 患者さんご自身の苦痛 継続する臭いにより、日常生活の中で強いストレスや不快感が生じます。

  2. 心の痛み・社会的孤立 においへの羞恥心や劣等感から、自尊心の低下や対人関係の断絶、治療意欲の低下へとつながることも。

  3. 周囲の人への影響 家族や医療・介護スタッフとの距離が生まれ、関わる人々にも負担がかかってしまいます。

ケアの基本:臭い対策を含むスキンケア

(1)創の洗浄

がん性皮膚潰瘍では「wound bed preparation(創面環境の整備)」が大切です。

  • 潰瘍部とその周囲は、弱酸性の泡タイプ洗浄剤でやさしく洗浄

  • 微温湯でしっかりすすぐ

  • 壊死組織は細菌の温床となるため、可能な範囲で除去(ただし出血リスクが高い場合は慎重に)

(2)ロゼックス®ゲル(メトロニダゾール外用)の使用

このゲルは、嫌気性菌に対して有効な抗菌薬です。臭いのもとである菌の活動を抑制することで、においの軽減につながります。

▼使用手順

  1. 潰瘍と周囲皮膚を洗浄

  2. ガーゼ等にロゼックス®ゲルを塗布し、潰瘍部に貼付

  3. 吸水パッドを重ね、テープで固定

※10×10cmの潰瘍には約8gが目安です。


▼注意点

ロゼックス®ゲルは皮膚から血中に吸収されるため、**脳や脊髄に器質的疾患がある方(例:てんかん、髄膜炎など)**には使用に注意が必要です。ただし、通常使用での血中濃度は内服薬に比べ非常に低く(約8分の1)リスクは限定的とされています。

患者さんのQOL(生活の質)を守るために

がん性皮膚潰瘍は、痛みや出血、臭いといった身体的な苦痛だけでなく、精神的な負担も伴います。ロゼックス®ゲルのような対処法を活用し、目に見えない「つらさ」にも寄り添うケアが大切です。

在宅医療に携わる方、ご家族の皆さまへがん性皮膚潰瘍のケアについてもっと知りたい方は、YouTubeで在宅診療について学ぶのもおすすめです!☞ 内田賢一 先生のチャンネルはこちら!

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