top of page

不定愁訴とうつ症状、その背景に「鉄不足」や「栄養の偏り」があるかもしれません



勤務医時代、私と同世代の患者さんが「めまいがする」「足がジンジンする」「耳鳴りがする」といった訴えで外来を受診されることがよくありました。画像検査や血液検査などを行っても大きな異常は見つからず、「問題なし」として経過観察となることがほとんどでした。

正直なところ、私自身これまで大きな体調不良を経験したことがなく、そうした「はっきりしない体の不調」に対して深く考えられていなかった部分があるかもしれません。

ただ、こうした方々の多くに共通している印象として、「食生活への関心が薄い」ということがありました。

私自身の朝食は、元旦を除いて毎日同じメニューです:

  • 自家製の野菜ジュース(自宅で採れた柑橘+200〜300gの緑黄色野菜)

  • ホームベーカリーで焼いたナッツ・ごま入りパン

  • ヨーグルト、チーズ、コーヒー

これだけでビタミンやミネラルの多くは摂れていると考えており、夜は軽い筋トレや有酸素運動の後、タンパク質中心の夕食を意識しています。

「うつ・パニックは鉄不足が原因だった」という本の衝撃

最近読んだ一冊に、精神科医の藤川徳美先生の『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)があります。この本では、現代の不定愁訴や精神疾患の背景にある“質的な栄養失調”について、非常にわかりやすく解説されています。

本書に挙げられている不調の例は、まさに外来でよく耳にするものです:

  • イライラ、集中力の低下、神経過敏

  • めまい、耳鳴り、立ちくらみ

  • 筋肉や関節の痛み、腰痛

  • 冷え性

  • ムズムズ足症候群(レストレスレッグス症候群)

こうした症状が、鉄不足やタンパク質不足と深く関係しているというのです。

鉄は“赤血球”だけでなく、“脳とエネルギー”にも不可欠

多くの医師は、鉄不足=貧血と考えがちですが、鉄には赤血球の材料というだけでなく、

  • セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の合成

  • ミトコンドリアでのエネルギー代謝

にも深く関与しており、脳と体の活力の根幹を支えているミネラルなのです。

とくに女性では、月経や妊娠・出産に伴い鉄の需要が高くなります。あるデータでは、日本人女性(15〜50歳)の約99%が鉄不足にあるとも言われています。

「なんとなく不調」の背景に、質的な栄養失調

現代の食生活は、糖質過多・たんぱく質・ビタミン・ミネラル不足という偏りが顕著です。白米やパン・加工食品ばかりが中心になり、カロリーは足りていても栄養が足りていない――これが「質的栄養失調」です。

藤川先生の本では、以下のような栄養評価の指標が紹介されています:

  • BUN(尿素窒素)15〜20 mg/dL → 10以下はタンパク質不足

  • MCV(平均赤血球容積)95〜98 fL → 90以下は鉄不足の可能性

  • フェリチン(貯蔵鉄)100 ng/mL以上が目標 → 30以下は明らかな鉄不足、鉄剤の適応

食事の見直しとともに、鉄補充も選択肢に

もちろん鉄剤での補充もひとつの手段ですが、胃の不快感などで継続が難しいことも多くあります。やはり大切なのは、毎日の食事からしっかりと栄養を摂取することだと私は思います。

「原因がよくわからない体調不良」が続くときは、ぜひご自身の食生活を見直してみてください。

医療の“リアル”をもっとわかりやすく

このような内容も、今後ブログやYouTubeを通じて、できるだけわかりやすく、正しくお伝えしていけたらと思っています。

ぜひチャンネル登録や公式サイトのチェックもお願いします!

▶️ 内田賢一 - YouTubeチャンネル🏠 さくら在宅クリニック公式サイト

最新記事

すべて表示

「先生、あとどれくらいですか?」というご家族の問いに

在宅医療の現場で、ご家族から最も多く寄せられる質問のひとつに「先生、あとどれくらいでしょうか?」という問いがあります。 このような場面では、まず「患者さんは最期の瞬間まで 聴覚は保たれている と考えられています。ぜひ、そばで声をかけながら過ごしてあげてください」とお伝えする...

Commenti


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page