介護保険と医療保険の違い、実はよく知らなかった話
- 賢一 内田
- 4月8日
- 読了時間: 3分

正直に告白すると、私自身、勤務医だった頃は「介護保険と医療保険の違い」をきちんと理解できていませんでした。脳卒中を中心とした急性期医療の現場に10年ほど携わり、延べ1万人の患者さんを診療、そのうち約7,000人が脳梗塞の方でした。多くの方が介護申請を経て、施設や在宅での生活に移行していきましたが、そのとき私が意識していたのは“病気の治療”だけ。彼らがどのような保険制度のもとで生活を支えられているかについては、正直まったく無知だったのです。
そんな私の考えが変わったのは、ケアマネージャーの資格試験の勉強を始めてから。在宅医療は“医師だけ”で完結するものではなく、看護師・薬剤師・ケアマネ・介護スタッフなど多職種の連携で成り立つ世界です。臨床スキルだけでは不十分で、制度や仕組みを理解し、チームをまとめる“監督兼プレーヤー”のような役割が求められます。
さて、ここからが本題です。
訪問看護は「介護保険」?「医療保険」?
原則として、要介護認定を受けている方の訪問看護は、介護保険のサービスとなります。
しかし!例外的に医療保険で訪問看護が提供されるケースもあるんです。
このあたりの詳細は、永井康徳先生(たんぽぽクリニック)の著書『たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル 第6版』 に、非常にわかりやすく書かれています。
医療保険が使える“3つの呪文”
永井先生はこの医療保険による訪問看護の適応条件を、「3つの呪文」としてまとめています。
呪文①:介護保険の認定を受けていない
要介護認定を受けていない人は、当然ながら介護保険は使えません。
40歳未満:介護保険の対象外です
40~64歳:16の特定疾患に該当すれば対象となります
65歳以上:要介護認定を受けることで対象になります
つまり、未申請や非該当の場合は、医療保険での訪問看護が行われます。
呪文②:末期がんや厚労省が定める難病など
以下のような疾患を有する場合も、医療保険での訪問看護が可能です。
末期の悪性腫瘍
パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、ホーエン・ヤールⅢ度以上 など)
ALS(筋萎縮性側索硬化症)
多系統萎縮症
人工呼吸器を使用している状態
その他、厚労省が定める疾患群
呪文③:急性増悪や退院直後で「特別訪問看護指示書」が出ている
医師が「特別訪問看護指示書」を発行した場合、14日間(条件により最大月2回)に限り、医療保険で訪問看護を行うことが可能です。
急性増悪(肺炎、心不全の悪化など)
真皮を超える褥瘡(Ⅲ度、Ⅳ度)
気管カニューレ留置中
終末期や退院直後など
この指示書が出ている期間中は、週4日以上の訪問看護が求められます。
最後に:現場の知識をシェアしよう
在宅医療の現場では、保険制度の知識がとても重要です。さくら在宅クリニックでは、パーキンソン病・パーキンソニズムの在宅対応をはじめ、YouTubeでも現場からの情報を発信しています。
ご家族・介護スタッフ・医療関係者の皆さまと、正しい知識を共有し、安心してケアができる環境を作っていきたいと願っています。
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