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在宅医療における糖尿病治療の問題点

糖尿病は放置すると様々な病気を引き越します。透析へ移行する慢性腎不全の一番の原因は糖尿病性腎症です。また心筋梗塞や脳梗塞などの血管障害の原因ともなる病気です。また高齢者では軽症の糖尿病においても感染などを契機に糖尿病性のケトアシドーシスが起こり、大変重症な病態となることがあります。但し、高齢者の糖尿病治療には注意が必要です。糖尿病における高血糖と治療における低血糖では、低血糖の方が非常に危険です。理由としては高血糖ではすぐさま生命に直結する病態には、移行しませんが低血糖の遷延は生命に直結するからです。例えば人体の中枢である脳はエネルギーとしてブドウ糖しか使えません。つまり、分かりやすく考えるなら低血糖は低酸素と同じ病態なのです。

日本糖尿病学会と日本老年医学会においても「高齢糖尿病患者の血糖コントロール目標」HbA1cの下限が設定されています。これは極めて画期的であり低血糖危険性を示すものです。

合併症予防のためのコントロール目標はHbA1c 7.0%未満ですが、合併症予防の効果が表れるのは10~15年後なので、余命が15年以内なら意味がなく、逆に厳密な血糖コントロールは低血糖を起こし死亡リスクを上げてしまいます。

患者さんの背景にもよりますが、訪問診療を受けているような患者さんはHbA1c 7~9%くらいのコントロールでちょうどよいのではないかと考えています。7%以下にはしないのがポイントです。

そして薬剤は低血糖のリスクの少ない薬が選択されます。

①ビグアナイド薬まず、第一選択となるのはメトホルミンです。メトホルミンは、血糖降下作用が高く、心血管イベントを減らし、体重を減らし、低血糖リスクが少なく、食欲抑制効果があり、安価で、癌発生抑制効果も期待されています。副作用としては乳酸アシドーシスが有名ですが、禁忌例(腎機能低下者、高齢者など)にさえ使わなければ、安全と言われています。eGFR30未満では禁忌、eGFR30~45では注意深く使う必要があります。高齢者は腎機能、肝機能の予備能が低下している方が多いので、75歳(あるいは80歳)以上では新規で処方しない方が良いと言われています。下痢の副作用もあります(15.3%)。

②SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬第二選択となるのは、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬と考えています。SGLT2阻害薬は、尿に糖を捨てる薬です。腎機能が低下している(eGFR45以下)と効果が発揮できません。尿量が増えるため、脱水→脳梗塞に注意が必要です。処方の場合は、もともとの利尿薬を減らすなども必要です。また、尿路感染症の増加にも注意が必要です。利尿効果によるものか心血管イベント予防効果や、さらに腎保護効果も報告されてきているので、エビデンスの集積が待たれます。DPP-4阻害薬は胆汁排泄型(トラゼンタ、テネリア)の薬剤もあるので、腎機能が悪くても使えます。1日1回の内服薬もあり、副作用が少なく使いやすいですが、血糖を下げる以外の効果が期待できないことが欠点です。

③α-GI炭水化物の摂取が多い方には、α-GIの追加が考えられます。この薬は糖の吸収を穏やかにし、食後高血糖を改善させる薬です。そのため、食「直前」投与なのが注意点です。服薬アドヒアランスが不良になるのが欠点ですが、これは全ての薬を食直前にまとめてしまえば解決します。

④GLP-1受容体作動薬 皮下注射製剤です。トルリシティという週1回の製剤があるので、自己注射ができない患者さんに、週1回在宅医療で注射するという方法で使えると思います。DPP-4阻害薬と併用できないのが注意点です。

⑤BOT(Basal supported Oral Therapy)経口血糖降下薬でコントロールが不良な場合、経口血糖降下薬の内服を続けながら、持効型インスリン製剤(トレシーバ、ランタスXRなど)を1日1回自己注射してもらう方法です。低血糖のリスクが少なく、安全にインスリンを導入できます。

⑥使うべきでない薬SU薬は低血糖を起こすリスクが高く使うべきではないと考えます。チアゾリジン薬(アクトス)は、インスリン抵抗性を改善させる薬剤ですが、副作用が多く(心不全、浮腫、骨粗鬆症)使うべきではないと考えます。

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#在宅医療

#在宅医療における糖尿病治療

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