認知症が薬で治るか?という問いの前に認知症とは病気なのでしょうか?人の神経細胞は再生しません。一応、これは原理原則であり、実際再生される部位もあります。但し、人間神経細胞が再生しないことは、理に適っていると私は考えます。もし、脱落した神経細胞が元通りに戻ればよいのですが、エンジンが壊れたから他のパーツに取り換えるように神経細胞が再生したら人格の同一性は、保てなくなる可能性を感じます。滅び傷むことも、またその人間の個性として同一性が保たれる仕組みなのでは私は考えます。よく患者さんから「認知症が治る薬があると聞いたのですが」と聞かれた場合、「そんな良い薬あれば自分が真っ先に飲んでますよ」と答えるようにしてます。
但し厚生労働省の推計では、2025年に認知症の人の数は700万人に増え、高齢者の5人に1人は認知症になると言われています。そういった時代においては、認知症に対する理解が必要です。認知症と言えばアルツハイマー型認知症を皆さんは想起されるか思います。この疾患はアルツハイマー博士に報告され、最初は一例報告だったそうです。これには様々なシガラミ上で一例報告されたそうですし、アルツハイマー博士もこの疾患は、様々な疾患が混在していると初期から指摘していたようです。
ここでは、日本の認知症占有率第2位(約20%)を占める、レビー小体型認知症についてまとめてみました。
レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)は意識障害系の認知症で、記憶障害より意識レベル低下による幻視や妄想、せん妄が問題化しやすくなります。また、パーキンソニズムによる転倒、誤嚥で介護が難しくなります。
その特徴としてパーキンソン病のように足を閉じての小刻みではなく、ゆっくり緩慢に腕を振らずに歩く。振戦はあまりみらない。座位で体幹が左右に傾斜する。非常に暗く硬い顔。声が小さい。弱々しい。性格はまじめで誠実。
そして一番の特徴は幻視です。あそこに***がいるので。というのはこの疾患の最大の特徴と私は考えます。特に生々しい幻視が特徴的!60~70%の患者にみられる。幻視は人、子供、動物が多い。
そしてもう一つの特徴は薬剤過敏性です。DLBは抗精神病薬、コリンエステラーゼ阻害薬、パーキンソン病治療薬、抗ヒスタミン薬に対して薬剤過敏性が強く出るので、これらの薬で副作用が強く出たことがないか聞く。具体的には、「風邪薬のせいで昼間から寝てしまった、睡眠薬が効きすぎて起きられなかった、パーキンソン病治療薬のせいで食べられなくなった、アリセプトで歩行できなくなった」などがなかったか。
夜間の寝言(=REM睡眠行動異常)、日中の眠気はないか。
原因不明の意識消失発作がある。救急搬送されたが、問題なく帰されたというエピソードがあるか。
嚥下障害があるか。食事中にムセるか。
認知機能が毎日変動していないか。
身体的特徴として
肘関節に歯車様筋固縮あり(=ドパミン不足を示す)。
改訂長谷川式簡易知能評価スケールにおいて、計算や数字の逆唱が不得意で遅延再生が得意。
治療
リバスタッチパッチ、ドパコール、抑肝散がDLB治療の3種の神器。DLBでは脳内でアセチルコリンとドパミンが低下しているため、それを少量のリバスタッチパッチとドパコールで補い、抑肝散で幻視を消す(ドパコールは後発品の薬剤だが、50㎎錠があるので少量投与に向いている)。
処方例:
リバスタッチパッチ4.5mg 1日1枚ドパコール50mg 2錠 分2 朝夕食後抑肝散5g 分2 朝夕食前(フェルガード100M 2包 朝夕食後 余裕があれば服用を勧める)
DLBの治療において最も重要なことは、アリセプトを規定量で処方しないこと。DLBの場合、薬剤過敏性があることから、アリセプトを処方するとしたら、かなり少ない量を処方しないと容易に症状が悪化します(2016年6月1日に少量投与が認められました)。DLBに対して、添付文書どおりにアリセプトを処方すると効きすぎて、歩けなくなったり、食事が摂れなくなることもあります。嚥下機能が低下することで誤嚥し肺炎を起こせば、死に至ることすらあります。前医でDLBに対してアリセプトが処方されていた場合、まずは中止するところから始めます。抗精神病薬も同様に、使うとしたら少量を注意深く処方します。
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