エルデカルシトールに関して「エルデカルシトールによる高カルシウム血症と血液検査の遵守について」という文章が配布されました。
このような文章が配布される背景には、エルデカルシトールによる高カルシウム血症の症例が相当数あり、大きな問題になっているのではないかと推察されます。
骨粗鬆症治療薬であるエルデカルシトールは、同じ活性型ビタミンD₃製剤である、アルファカルシドール、カルシトリオールに比べて、骨密度上昇効果、椎体骨折予防効果が優れています。また、転倒抑制効果を有すると言われており、このことからも、よく処方される薬です。
しかし、治療効果が高い反面、それだけ高カルシウム血症を起こしやすい薬だと考えられ、処方には注意を要します。
自身の経験した症例を振り返ってみると、以下のような問題点が挙げられます。考えられる対策とともに列挙します。
①食欲不振で紹介されたが、エルデカルシトールを内服していた。
エルデカルシトールを内服中の方が食事が摂れなくなった場合には、エルデカルシトールの中止を指示する。骨粗鬆症治療は命に関わらないが、高カルシウム血症は命に関わる。
②腎機能が低下している方にエルデカルシトールが漫然と処方されていた。
高カルシウム血症のリスクが高いため、腎機能が低下している方にエルデカルシトールは処方しないのが大原則。特に、高齢者は腎機能が低下している方が多く注意が必要。処方前には腎機能を評価をする。また加齢とともに腎機能は低下するので、経時的な評価も必要。夏場の脱水による腎不全にも注意。
③寝たきりの方にエルデカルシトールが漫然と処方されていた。
寝たきりの方は転倒することもないので、骨折のリスクは低く、骨粗鬆症治療の優先度は低い。
④エルデカルシトールを内服中だが、家族が薬だけを取りにいっており、長期間血液検査がされていないと思われる。
エルデカルシトールを内服中の方は血清カルシウム値を定期的(3~6カ月に1回程度)に測定する。
エルデカルシトールとともにカルシウム製剤も処方されていた。
エルデカルシトール単独でも高カルシウム血症のリスクがあるが、血清カルシウム値が上がるカルシウム製剤、PTH製剤を併用すると高カルシウム血症のリスクはさらに高まる。カルシウムのサプリメントを飲んでいないかも注意。併用するならSERM、ビスホスホネート製剤が望ましい。エルデカルシトールは慎重に処方しなければならない薬で、サプリメント的に気軽に処方すると痛い目にあいます。骨粗鬆症は重要な病態ですが、高Ca血症への目配りが必要と考えます。
逗子在住山内明徳様撮影
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