高齢者の方が約30%の割合で、転倒を起こすといったデータが発表されています。全転倒のうち、30%は失神を原因とするものといわれていますが何故、高齢の方は失神をするのか、ということを考察して行こうと思います。
高齢者の方は自然な老化に加え、高血圧や糖尿病、心疾患など複数の疾患を持つことが多く、そのことにより身体全体の機能低下も引き起こします。
ヒトのからだは、本来あらゆる状態・環境の変化に応じて一定の状態を保つ性質があります。しかし、高齢になるとそれらの機能は低下し、変化に対応し辛くなっていきます。そのため、からだの血流減少や血圧低下を招きやすく、脳への血流が途絶えて失神を引き起こし易くなるのです。
筋肉量低下が失神を招く
筋肉量は加齢とともに低下します。特に、日常生活で使う機会が多い手や腕よりも、歩行などの運動習慣が減ることによって足や股の筋肉量の低下が顕著です。
その結果、足からの静脈血が心臓に戻るための、筋肉が静脈を圧迫する力が弱まり、足に血液が停滞しがちになります。そのため、全身への血流が悪くなり、脳へも十分に血液が行かなくなるため失神を起こしやすくなります。
筋肉のポンプ作用低下を防ぎ失神予防
厚生労働省の調査によると、1週間安静臥床で筋力は20%、2週目になると40%低下するという結果が出ています。つまり、何もしないでいると、筋肉と筋力は落ち続けて行くという事が分かります。
その点からも日常に置いて、足から心臓へと血液をくみ上げる筋肉のポンプ作用を機能させるために、下肢の筋肉を強くすることが大切であると考えられます。
歩行が困難でも、座位を取ることが出来るのであれば椅子に座る時間を作るなど、下肢を鍛えることは、失神に限らず転倒や骨折などが減り、生活の質の向上へと繋がって行くと言っても過言ではないでしょう。
高齢者はなぜ食後に失神するのか
高齢者の方は食後低血圧になり、失神を起こすことがあります。高血圧や糖尿病など、自律神経の調節がうまくいかない場合などに多くみられ、その割合は高齢者の1/3とも言われています。理由としては、食事をすると迷走神経の働きで血液は消化のために胃腸に集まり、血管は拡張し、心拍数が減少するからです。
通常その状態を改善するために、交感神経が働くのですが高齢であればあるほど自律神経のコントロールがうまくできないため、低血圧状態が続いてしまい、その結果食後に失神する事態に繋がります。
高齢者はなぜ食後に失神するのか
食後すぐに立ち上がらず、ゆっくりと休む他に食事の前後に緑茶やコーヒーなどの、カフェインを摂取することで交感神経が刺激されて血圧上昇作用があるため失神予防に有効とされています。また、自律神経を改善するために、適度な運動や早寝早起きなど、生活習慣を見直すことも必要です。
年齢を重ねるということは、“出来ないこと”が増える事でもありますが、今まで当たり前のように出来ていたことが、出来なくなってきてしまうのは仕方のない事と、前向きに捉えて、今の自分自身に出来ることを見つけて生活習慣の改善を目標に、出来る範囲での運動の取り入れをすることも予防という観点ではプラスかと思われます。
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